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第28回 国際開発研究大来賞 決まる (2024年10月30日)


第28回(2024年度) 「国際開発研究 大来賞」(おおきた賞)は下記作品の受賞に決定しました。
多くの皆さまからのご推薦、ご応募に御礼申し上げます。
詳しくは【第一報】をご覧ください。


【 第一報 】        受賞作品紹介リーフレット

『中国開発学序説 - 非欧米社会における学知の形成と展開』
 汪牧耘(WANG Muyun) 法政大学出版局 2024年


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【 審査委員による選評 】
早稲田大学理工学術院国際理工学センター 教授 北野 尚宏

本書は、世界的に注目されている中国の国際開発を、同国における「開発学」の形成過程に焦点を当てて論じた初めての書籍である。筆者は、中国政府が欧米からの中国の開発手法に対する批判を受けて、新たな国際開発研究機関設立などにより自国の開発経験の理論化を目指すようになった近年の動向に注目する。中でも、中国農業大学を中心とする中国の研究者たちが、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)との交流などを契機に、欧米の開発学を吸収し、中国独自の開発学創出を模索しながら開発言説の普遍化に取組み始めた経緯を丹念に描いている。
【審査過程における協議について】
 審査過程の協議では、中国の開発政策は従来の一帯一路やインフラ整備だけでなく、社会セクターも含む多角的なアプローチへと移行していることを踏まえて、中国の開発を理解する上での従来の学問的な枠組みを越えた視点の必要性が論じられた。その上で、開発途上国における社会的・政治的な影響や今日における普遍性を考慮すると中国の開発についての研究を顕彰する意義は大きく、本年度の大来賞受賞作は『中国開発学序説』とすることに決定した。
 日本で研究を続ける海外若手研究者による著作であることも、その決定を後押しした。
 
本事業には、公益財団法人 三井住友銀行国際協力財団より助成を受けています。
 

表彰式・記念講演会

日時 2025年1月15日(水)13:00~ (2時間程)

この受賞を祝して表彰式・受賞作品著者による記念講演を開催いたします。みなさまには ぜひご参加を賜りたくご案内いたします。参加無料。(要申込)

会 場: ハイブリッド式: オンラインzoomによる参加者のみ募集します
     (感染症対策等により、オンライン配信のみとなる場合がございます)

申 込: オンラインフォームからお申込みください
     

締 切: 2025年1月8日(水)正午
     60名程(定員に達した時点で受付を終了します)

講 演

汪 牧耘 (おう まきうん / WANG Muyun) 東京大学東アジア藝文書院 特任助教
「開発学はいかにあるか—中国にみる非欧米社会の知的可能性」

経済的な台頭だけでなく、知的生産者として台頭した中国は、植民地支配や冷戦下の対外政策という歴史的文脈の中で形づくられてきた開発学に転換をもたらそうとしています。果たして中国は、従来の「東/西」「南/北」の二項対立を超えた、批判的かつ多遍的な開発学を構築できるのでしょうか。本講演は、中国における開発学の言説形成を辿ることで、アジアで学び育った一人としての視座から国際社会を紡ぐ知を非欧米社会から発する可能性を展望します。

 

受賞者のことば・執筆者略歴・主要著書

汪 牧耘
大来佐武郎の生誕110周年の年に、その名を冠した賞を戴くことをとても嬉しく思っております。日本戦後史において、「世界人」と振り返られる大来が、何を「国際」とし、いかなる「開発」を想像していたのか。1970年代に始まる日中経済知識交流会をはじめとする両国の知的往来を追う過程で、大来が架け橋となった国際開発の現場に思いを馳せることは少なからずありました。中国からの留学生として来日した私にとって、それは、異なる時代を貫いた越境者の気概に触れ合うことであり、両国の狭間を生きる自らの足元を見つめ直すことでもありました。
本書は、2022年度に東京大学に提出した博士論文をもとに執筆いたしました。大来が見届けられなかった1990年代以降の中国で生まれ育った私の関心は、中国の経済を成長させるための開発というよりも、中国と国際社会を繋ぎなおす核心的な現場としての開発に向けられてきました。中国の海外進出は賛否両論を呼んでいますが、そもそも中国における「開発」概念はどこから来たのか、中国の国際開発は一つの知的現場としてどのような可能性を持ちうるか——こうした問題意識に応える方法として、本書は開発学という言説空間に着目し、中国における国際開発の学術研究の形成と変遷を文献調査とフィールドワークから明らかにすることを試みました。それを通して見えてきたのは、中国の開発経験が、実は国境を跨ぎながら他国と絡まり合っていることです。その同化でも対立でもない関係性は、今日の国際開発を検討する上でも有益な手がかりになっていると考えます。
法政大学出版局の担当編集者が、本書の原稿を読んで「珍獣発見」という感想を漏らしたように、本書を特定の学問の系譜に位置づけ評価することの難しさは私自身も感じてきました。
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汪 牧耘 (おう まきうん / WANG Muyun)
東京大学東アジア藝文書院特任助教。中国貴州省生まれ。2018年法政大学大学院国際文化研究科修士課程修了(国際文化)。2022年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了(国際協力学)。東京大学東洋文化研究所特任研究員を経て、2024年4月より現職。都留文科大学、国際基督教大学非常勤講師。専門は開発学、対外援助研究。「より良い生」をめぐる感覚、記憶や言説の知識化に関心があり、中国や日本、そして東南アジアをフィールドとして、国際開発の学問的な系譜をドキュメント分析と現地調査から浮き彫りにすることを試みている。
 
"The Trinity of Aid, Trade, and Investment: The Reemergence of a Japanese-Style Development Term as China Rises."(The Semantics of Development in Asia: Exploring ‘Untranslatable’ Ideas Through Japan, Jin Sato and Soyeun Kim (eds.) , Springer, 2024年)。「中国における国際開発研究の受容と展開:脱『欧米中心主義』の可能性の一考察」(『アジア経済』64(3)、2023年)。「『開発=开发(カイファー)』の意味変容と概念形成:日中における言葉の借用を中心として」(『国際開発研究』29(1)、2020年)など。
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お問い合わせ先

一般財団法人 国際開発機構 国際開発研究センター
国際開発研究 大来賞事務局(担当:服部)

Email:okita@fasid.or.jp 
TEL:03-6809-1997   FAX:03-6809-1387

   

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